理由は無いのにふとみんなと離れたくなった。
ルカーにだけは行き先を告げ、ここまで来た。
イルカ島から離れ、いくつかの潮流を抜け、昔の
大きな船が沈むこの場所。
折れたマストの上に腰掛け、膝を抱える。
ルカーとともに迷い込んで、それ以来トリトンは、
何か思う事があるとよくここに来ていた。 
目の前を白いものがゆらゆら揺れて
深淵の海溝に吸い込まれていくのに気が付いた。
ゆらゆらと落ちてくる
それは、まるで地上に降る雪のようにも見えた。
その中に人影を見る。
海の中の雪景色の中、光に憧れ‥
消えていったあの人の姿をみたような気がした…

                    
(文章:ろうねこさん)

輝く光の中に消えていった
あの人
 海の泡よりも はかなかった
 あの人

だけど どんな波よりも
力強く生きた
あの人


うみかほるさんの詩とろうねこさんの文章はちあきさんのサイト「Dreaming Castel-夢の城-」で左上のイラストを投稿したときにコメントで頂いたものです。
今回、皆様の了解をいただき、ずうずうしくも合作ということで頁を作らせていただきました。
下の大きな横顔のイラストは新しく描いてみたのですが、
少し大人になったトリトンの胸に今も残る面影、というイメージで、かほるさんの詩はこちらを合わさせていただきました。

 どんな人よりも
 オレの心に残る
 あの人

  あの人は
  もう いない


    
 (詩:うみかほるさん)