理由は無いのにふとみんなと離れたくなった。
ルカーにだけは行き先を告げ、ここまで来た。
イルカ島から離れ、いくつかの潮流を抜け、昔の
大きな船が沈むこの場所。
折れたマストの上に腰掛け、膝を抱える。
ルカーとともに迷い込んで、それ以来トリトンは、
何か思う事があるとよくここに来ていた。
目の前を白いものがゆらゆら揺れて
深淵の海溝に吸い込まれていくのに気が付いた。
ゆらゆらと落ちてくる
それは、まるで地上に降る雪のようにも見えた。
その中に人影を見る。
海の中の雪景色の中、光に憧れ‥
消えていったあの人の姿をみたような気がした…
(文章:ろうねこさん)
輝く光の中に消えていった
あの人
海の泡よりも はかなかった
あの人
だけど どんな波よりも
力強く生きた
あの人
どんな人よりも
オレの心に残る
あの人
あの人は
もう いない
(詩:うみかほるさん)